日本の自動運転技術:レベル4実現への道のりに関する画像
自動車テクノロジー 7分で読める

日本の自動運転技術:レベル4実現への道のり

レベル3世界初認可:ホンダLegendの画期的達成

2021年3月、ホンダは世界で初めてレベル3の自動運転車を市販化した。「Honda SENSING Elite」を搭載したLegendは、高速道路の渋滞時にドライバーがハンドルから手を離し、車載ディスプレイで映像を視聴することすら許可された。SAE(自動車技術会)が定義する自動運転レベルにおいて、レベル3は「条件付き自動運転」——つまりシステムが運転を担当し、緊急時のみドライバーが対応する段階であり、この認可は世界の自動車産業における歴史的なマイルストーンだった。

ただし、Honda SENSING Eliteの適用範囲は限定的だった。高速道路での渋滞時(時速30km以下)のみという条件付きであり、100台限定のリース販売にとどまった。それでも、自動運転の法的枠組みを世界に先駆けて整備した日本の取り組みは、業界から高い評価を得ている。

日本は2023年4月に道路交通法を改正し、レベル4(特定条件下での完全自動運転)の公道走行を法的に認可した世界初の国の一つとなった。

日産ProPILOT:量産車への自動運転技術展開

日産自動車の「ProPILOT」は、日本メーカーの先進運転支援システム(ADAS)として最も広く普及しているシステムの一つだ。ProPILOT 2.0は、高速道路の同一車線内でのハンズオフ(ハンドルから手を離す)走行を可能にし、ナビゲーション連動のルート追従や車線変更支援も実現している。

日産の自動運転戦略の特徴は、段階的なアプローチにある。まずは高速道路での運転支援を充実させ、次に一般道への拡張、そして最終的に都市部での完全自動運転を目指す。日産とルノーの「Alliance Intelligent Driving」プラットフォームは、多数の車両から収集した走行データをクラウドで共有し、AIモデルの継続的な改善に活用する仕組みを構築している。

トヨタの自動運転戦略:慎重かつ着実なアプローチ

トヨタ自動車は、自動運転技術の開発において「Guardian(守護者)」と「Chauffeur(運転手)」の2つのアプローチを並行して推進している。Guardianはドライバーの操作を補助し事故を防ぐ安全技術であり、Chauffeurは完全自動運転を目指す技術だ。

トヨタのウーブン・シティは、自動運転技術の実証実験場として設計されており、限定された環境での自動運転車の運行データ収集と技術検証が行われている。トヨタの子会社であるウーブン・バイ・トヨタは、高精度地図の作成、自動運転ソフトウェアの開発、安全性の検証を統合的に進めている。

SIP:産官学連携の自動運転研究

内閣府が推進するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)は、自動運転技術の社会実装を加速させるための大型国家プロジェクトだ。SIPの「自動運転」プロジェクトでは、ダイナミックマップ(高精度3次元地図)の整備、車車間・路車間通信(V2X)のインフラ構築、サイバーセキュリティ対策、法制度の整備が統合的に進められている。

特にダイナミックマップ基盤株式会社(DMP)は、日本全国の高速道路と主要一般道の高精度3次元地図データを整備しており、自動運転車が正確に自己位置を推定するための基盤インフラとなっている。

メーカー システム名 最高レベル 対応シーン
ホンダSENSING EliteL3高速道路渋滞時
日産ProPILOT 2.0L2+高速道路全般
トヨタToyota Safety SenseL2高速・一般道
スバルEyeSight XL2高速道路

過疎地域の自動運転バス:社会課題への技術的回答

日本ならではの自動運転の応用事例が、過疎地域での自動運転バスだ。高齢化と人口減少が進む地方では、バスドライバーの不足が深刻な社会問題となっている。公共交通の維持が困難になる中、自動運転バスは「地域の足」を守る有力な解決策として注目されている。

福井県永平寺町では、レベル4の自動運転バスが公道で定常運行を開始している。SBドライブ(現BOLDLY)が運行するこのサービスは、遠隔監視オペレーターが車両を見守りながら、決められたルートを自動で走行する。乗客の乗降管理や緊急時の対応も含め、無人運転の社会実装モデルとして全国から視察が相次いでいる。

センサー技術と日本の強み

自動運転の実現には、カメラ、LiDAR、ミリ波レーダー、超音波センサーなど複数のセンサーの融合(センサーフュージョン)が不可欠だ。この分野でソニーのイメージセンサー技術や、デンソーのミリ波レーダー、パイオニアの3D LiDARなど、日本企業のセンサー技術が重要な役割を果たしている。

日本の自動運転技術は、米国のWaymoやCruiseのような「一気にレベル4・5を目指す」アプローチとは異なり、段階的かつ安全重視のアプローチを取っている。この慎重さは市場投入の速度では不利に見えるが、バッテリー技術の進化と相まって、長期的には日本の自動車産業の信頼性とブランド価値を支える戦略となりうるだろう。

T

TechFromJapan編集部

テクノロジージャーナリスト、エンジニア経験者、業界アナリストからなる編集チームが、日本の最先端テクノロジーとイノベーションを多角的にレポートしています。